急激な米金利上昇で、メガバンクの外債含み損が1兆円近く膨らんだ。
金利が上がる事は、銀行業に取ってプラスと考えていたが、多岐にわたる金融業務を行い、チャンスがピンチに変っている。
外国債券含み損、3ヶ月で0.9兆円
世界的な金融引き締めによる市場の混乱が大手銀行の収益に逆風となっている。
金利上昇による債券価格の下落で、日本の3メガバンクが6月末時点で抱える外国債券の含み損は3月末の計1.7兆円から2.6兆円強に膨らんだ。
株式や社債の引き受けなど投資銀行部門が失速し、日米欧の大手16行のうち10行が4~6月期決算で減益か赤字となった。全体の純利益は3割減った。
3メガの決算が2日出そろった。保有する外国債券の含み損は三菱UFJフィナンシャル・グループが1兆2181億円と3カ月で約3650億円増えた。
三井住友は7296億円、みずほは7092億円。
3メガを合わせた外債含み損は同期間に55%増えた計算だ。
デリバティブによるヘッジ取引から生じる評価益などを考慮すれば、実質的な含み損は三菱UFJで約8000億円、みずほでは4312億円になるという。
貸倒引当金など増加も、利ざやは改善
連結純利益の合計は5252億円と前年同期比で37%減った。
2日に決算を発表した三菱UFJは米地銀MUFGユニオンバンクが抱える2544億円の債券含み損などを4~6月期に損失として処理し、純利益は70%減の1136億円だった。
ユニオンバンクの売却が完了すれば損失の一部が戻ってくるという。
20年に出資した東南アジアの配車大手グラブの株価下落に伴う減損損失も432億円計上した。
マレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)とみられる取引先の格下げでみずほフィナンシャルグループは貸倒引当金が膨らんで純利益が36%の減益で、3メガ合計の純利益は4割近い減益となった。
三井住友フィナンシャルグループは24%の増益だった。
金利上昇の局面では預金金利より先に貸出金利を上げやすく、利ざやの改善が進む。
本業のもうけを示す連結業務純益は、海外を中心に利ざやの改善も下支えして35%増の計1兆68億円。
資源高に対応した運転資金の調達など国内外で資金需要が伸び、貸出金の合計は295兆円と前年同期から10%増えた。
回収が難しくなる事態は足元では限定的で、貸倒引当金など通期の与信費用は計6100億円と前期から27%減る見通しだ。