三井住友銀行は2023年4月に入行する新卒の初任給を5万円引き上げる方針を固めた。
大卒は24%上昇し25万5000円となる。
みずほフィナンシャルグループ(FG)も24年に同程度上げる方向で検討する。
3メガバンクとも22年まで10年以上にわたって、初任給は20万5000円で横並びだった。
他行に先駆けて若手の給与を他業種に見劣りしない水準にし、人材の確保とつなぎ留めを図る。
三井住友銀は23年入社の約400人の初任給を募集時よりも5万円引き上げる。
院卒初任給は従来の23万円から28万円になる。
新卒との賃金逆転が起きないよう、入行数年以内の若手の賃金もあわせて引き上げる。
銀行などグループで一括採用するみずほFGも新卒初任給を24年に引き上げる方向で検討している。
三井住友銀の初任給上昇は07年に17万4000円から現在の水準にして以来16年ぶりだ。
3メガバンク体制の発足後、横並びで上昇していなかった初任給を三井住友銀が先行して引き上げ、4年後の11年に三菱東京UFJ銀行(当時)とみずほFGが同水準に追随した。
メガバンクが初任給引き上げに動くのは物価上昇への対応に加え、人材の獲得競争が業界の垣根を越えて激しくなってきたことも理由だ。
特に三井住友が力を入れるデジタル分野など専門人材はあらゆる業界で取り合いになる。
メガバンクは勤め続けた場合の賃金が他業種と比べて高水準だが、初任給は見劣りする。
厚生労働省の21年の賃金構造基本統計調査によると、大学新卒の平均賃金は22万5400円。
メガバンクの初任給は平均を2万円超も下回っていた。
同調査では金融・保険業の全年齢の平均賃金が他業界に比べて高めである一方、20〜24歳では情報通信業などを下回っている。
マイナビと日経が調べた23年卒の就職人気ランキング(文系総合)では、銀行で最も上位の三菱UFJ銀行でも21位だった。
3メガバンクともトップ10に入っていた5年前に比べ存在感が薄れている。
金融機関から異業種への転職も増加傾向だ。
デジタル化などで銀行の戦略も変化する中、若手の待遇を向上させて優秀な人材を確保し、競争力を高める。