人手不足だから労働者は強気になれる。
インフレも収まらず、ますます賃上げ要求が増える可能性がある。
アメリカのインフレは、簡単には収まらない。沈静化に5年くらいはかかるかもしれない。
米国でストライキが急増
米国で従業員によるストライキが急増している。
2022年はこれまでに前年同期比で8割増となる270件超のストライキが発生した。
収まる気配がないインフレなどを背景に賃上げや労働条件の改善を求める声が高まっている。
深刻な人手不足が続いていることも従業員側の強気な要求につながっている。
米コーネル大のまとめによると、22年1月1日から9月16日までに271件のストが決行された。
前年同期に実施されたストは150件だった。
ストの規模も拡大しており、2000人以上が参加したストは6件から12件に倍増した。
業種別でみると、食品・サービス系が全体の約4割と最多だった。
次いで、全米で人手不足が特に深刻とされる教職員が2割、医療従事者が1割を占めた。
30年ぶりとなる大規模な鉄道のストは16日から予定されていたが、米ホワイトハイスの仲裁により回避された。
ストに突入すればサプライチェーンの混乱は必至で、インフレに拍車がかかるとして懸念が強まっていた。
鉄道会社と労働組合の暫定合意では14%の即時の賃上げに加えて、2020~24年の5年間に複利で年率24%の賃上げと毎年1000ドル(約14.3万円)の特別賞与の支給が盛り込まれた。
米CNBCによると、交渉材料となっていた労働環境の改善については有給休暇を増やすという。
米航空機大手のボーイングは8月3日、戦闘機などを製造する中西部ミズーリ州セントルイスの工場の従業員と賃上げで合意し、ストを回避した。
会社が生活費の補助とともに3年間で平均14%の賃上げなどを提案した。
インフレと労働力不足の長期化が背景
ストが急増しているのは、インフレと深刻な労働力不足が長期化しているためだ。
組合側は、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていないうえに、人手不足で労働環境が悪化していると主張している。
13日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)は前月比で0.1%上がり、インフレ減速への期待を裏切る結果になった。
住居費などのサービスに加え、食料品など幅広い品目で価格上昇が続いている。
労働市場の逼迫も長引いている。8月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から31万5000人増加した。
失業率は3.7%と低水準にとどまっている。