三菱UFJ銀行は、入会審査なしで買い物などに必要なお金を前借りできる「後払い決済」ビジネスに3メガバンクで初めて参入する。
信用力の判断などで独自の技術を持つフィンテック企業のカンム(東京・渋谷)を傘下に収め、数年後に後払い機能を持たせたデビットカードの発行を始める。
若年層を中心に後払いサービスが浸透するなか、多様な決済方法に対応して将来の顧客基盤を確保する狙いがある。
カンムの発行済み株式を200億円弱で買い取り、2023年春にも連結子会社とする。
出資比率は約7割となる見込み。
現経営陣は残り、経営の独立性を維持する。
三菱UFJ銀行は東南アジアで「BNPL」と呼ばれる後払い決済サービスを手掛けるインドネシアの有力なフィンテック企業、アクラクにも出資すると決めた。
若者などを中心に世界で広がる後払い決済ビジネスを海外だけでなく国内でも展開する必要があると判断した。
クレジットカードは年収などの信用情報をもとに審査するが、BNPLなどの後払いサービスは細かな個人情報を必要としない。
小売店での購買などの行動履歴をもとに信用力を判断し、利用のハードルを下げているのが特徴だ。
カンムは、スマートフォンのアプリで氏名や年齢を入力すると即座にビザのプリペイドカードを発行するサービスを手掛ける。
手元の現金が足りなければ、カンムが立て替えるかたちで最大5万円までカードに入金でき、翌月末までにコンビニエンスストアなどで手数料をあわせて利用額を返済してもらう。
蓄積したデータから信用力を分析して与信枠を設定し、貸倒率を抑えている。
三菱UFJはカンムの技術やノウハウを生かして、自ら発行するデビットカードに後払いの機能を搭載する。
銀行口座の残高が少なくても、一定額までは銀行から前借りをしてデビットカードで買い物することができ、後日返済するようなサービスを想定している。
カンムは11年設立のスタートアップで、アプリのダウンロード数は今年9月末時点で約600万。10代と20代が全体の半数強を占める。
約3400万人の個人顧客を抱える三菱UFJフィナンシャル・グループが販路の拡大に協力するほか、人事交流を通じて新たな金融サービスの開発もめざす。
メガバンクは銀行口座の開設数でネット銀行の勢いに押されている。
三菱UFJ銀行では21年度の開設数が70万件程度にとどまる一方、楽天銀行などの新興勢は100万件を超える。
若年層との接点が減ると顧客基盤が先細りしかねない危機感がある。
カンムとの連携で顧客基盤を若年層に広げ、住宅ローンの借り入れや資産運用の相談など中長期的な取引の複線化にもつなげたい考えだ。