アメリカのネットフリックスが、東京都内に世界初のアニメ制作支援の拠点を設けた。年間2兆円という莫大な製作費と世界で2億世帯(100カ国)の会員を後ろ盾に、自社動画配信サービス向けに日本のアニメ制作人材の囲い込みで攻勢をかける。
日本の民法キー局5社と映画大手3社の制作費は年間4,000億規模(コロナ前)とネットフラックス1社と4〜5倍の差が開く。
今回の新拠点(アニメ・クリエイターズ・ベース)では原作者やデザイナーらが国内外から集まり、「コンセプトアート」(企画や脚本などの工程の前、初期案)を制作する。
ネットフリックスでっは、アニメの視聴世帯数は毎年50%前後伸び、2021は全体の6割世帯が視聴している、特に高品質の日本アニメ人気は高い。
アニメ市場では中国勢も含めて優秀なクリエーターの獲得争いが激しく、日本のコンテンツ産業全体に賃金の改善、制作環境の整備が急務。国内のアニメーターの平均年収は長年のデフレも要因で、2020年は340万円にとどまる。一方、アメリカは約700万円と大きな開きがある。
専門家からは「テレビや映画などの日本の垂直統合の作り方が崩れ、テレビや映画がコンテンツ配信の主役にとどまれなくなった」と指摘される。制作費を1社で担い、制作会社やクリエイターを囲い込む「ネトフリモデル」は日本の、出版社やテレビ局、配給会社などが出資しあう「製作委員会方式」と大きく異なる。
低賃金で良質のコンテンツを制作してきたアニメ人材が海外の配信企業の資金力によって囲いこまれ、国内産業が空洞化しかねない状況であるが、「ネトフリとの競争を通じて製作費や待遇などの水準が全体的に上がってきた」(大手制作プロデューサー)との話も出ている。
所見
世界に通用する、日本の強みの一つ「アニメ」が、海外から買い取られる。デフレによる「安い日本」は、クリエイターの賃金も同様。ネットフリックスのビジネスモデルも強いが、それ以上に「安い日本」を変えなければ、優秀なクリエイターは全て持っていかれる。
この現象はアニメに限らず、他の分野でもいずれ出てくる。優秀な人材は海外資本に雇用され、日本産業は空洞化、グローバル化の世界でデフレは大きなハンデとなっている。