13日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時0.255%と、日銀が上限として示す「0.25%程度」を上回った。
人為的に金利を抑え込む『ひずみ』
日銀は0.25%の利回りで無制限に国債を購入しているのに、0.25%より高い金利(価格は低い)で取引が成立したことは、人為的に金利を抑え込む「ひずみ」の表れとみられている。
上限超えの背景には「日銀がディーラーなどに国債を貸し出す国債補完供給(SLF)の利用制限がある」(東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジスト)。
ディーラーは投資家の買い注文に応じる場合など、SLFを利用して国債を借りてくる場合がある。
ただ、日銀が0.25%以下に金利を抑えるために実施する指し値オペに国債を売却する時にはSLFで借りられない。
あるディーラーが日銀から借りる道を閉ざさないために、不利な値段でも市場で売却する判断をしたもようだ。
日銀が10年債を吸収し、市場の流動性は極端に低下している。「上限突破」は市場の機能低下を映す。
指し値オペ、1.5兆円
日銀は13日も指し値オペを通じて1兆5337億円の国債を買い入れた。
買い入れ額は指し値オペとして2018年7月以来の大きさだ。
日銀が同日午後2時に「臨時の国債買い入れを14日に実施する」と発表しても債券売りは止まらなかった。
10年債は0.255%を付けた後の取引が成立しなかったものの、30年債や40年債は前日比0.1%上昇と午前から上げ幅を広げた。
日銀が金融政策を修正すれば国債急落
16~17日には日銀が金融政策決定会合を開く。足元で加速する円安について黒田東彦総裁も「経済にマイナスであり、望ましくない」と認めている。
日銀が金融政策を修正すれば10年債利回りが急騰(債券価格は急落)するため、国債を売り持ちにしておけば高い利益が見込めるとの見方がある。
日銀が連続指し値オペを続けている以上は「長期金利が無制限に上がる可能性は低い」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジスト)との指摘は多い。
所見
とうとう指し値オペでも上限金利を突破した。
無限に国債を買っても、金利を抑えられないなら、金利は人為操作に限界があるということ。
少なくとも黒田総裁は来年任期2023年4月までは指し値オペを実施するが、その後は急転換もありえる。
急にドル円が135円→110円になったりするかもしれない。